犬の飼い方で大切なのはノウハウではなく動物福祉を考えぬくこと
『犬 飼い方』で調べると犬をどのように飼育するといいのか?という取扱説明書のような記事や本がたくさんでてきます。
もちろんそれらに書いてある内容は基本的なことであると同時に大切なことなのですが、犬という動物を迎えるのであればそれよりももっと根本的なところを考えなければなりません。
それは動物福祉の向上です。聞いたことがある人もまだ少ないかもしれませんが、これを知らないとどんなにノウハウ的なことを学んでも意味がないのです。
犬の飼い方を間違えないためにも動物福祉の向上とは何か?についてまずは知っていきましょう。
■犬の動物福祉の向上とは5つの自由と5つの領域から考える
犬を迎えるにあたって大前提となるのは動物福祉の向上を考えるということです。
動物福祉を考えることができるということは、犬であるその子にとっての幸福とは何かを考え取り組むことができることを意味します。
そして、動物福祉には5つの自由とそこから更に発展した5つの領域があります。
【5つの自由】
・飢えと渇きからの自由
・不快からの自由
・痛み・負傷・病気からの自由
・恐怖や抑圧(不安)からの自由
・正常な行動を表現する自由
【5つの領域】
・栄養(バランスが取れて多種多様な食事や十分で新鮮な水)
・環境(自由な行動ができて
・健康
・行動
・精神状態
5つの自由は最低限担保するものですが、これだけでは幸福であると言うには不十分であり、近年では5つの領域を重視するようになってきています。
その2つの違いはというと5つの自由はマイナスを取り除くという視点なのに対し、5つの領域はポジティブな体験をどんどん与えプラスを増やしていこうというものです。
例えば5つの自由における飢えと渇きからの自由は「食べ物と水を与えて、飢えたり渇きで苦しまないようにしましょう」というもの。
しかし、5つの領域の場合は「バランスの取れた食事・良質な食事・多種多様な食事・適切な量の食事・十分な量の新鮮な水分」といったように、ただ与えればいいというものではありません。
与え方ひとつにしてもフードボウルに出して与えるのではなく、知育トイなどを使って採食行動による本能を満たしてあげるような工夫も大切です。
そうすることで、食事というひとつのカテゴリのなかだけでも栄養・行動の状態に対してプラスを与えることができます。
それによって遊び心や満足感といった精神状態もプラスの経験にもっていくことができ、それが動物福祉の向上に繋がっていくのです。
動物福祉を理解しておくことができれば、この先いろんな話しをいろんな人から聞くなかで「本当にその考えや方法は動物福祉に配慮しているといえるだろうか?」と自分自身で考えることができます。
しかし、犬の飼い方というノウハウしか見えていないと動物福祉に反した考えや行為だとしてもそれに気づかない、または自分の都合の良いように捉えて事実を見ないようになってしまい危険です。
こうしたことをまずは前提の基本として、飼い主が守るべきものであることを理解しておきましょう。
■犬を迎える前に動物病院・ドッグトレーナー・トリマーに話しを聞こう
犬の飼い方を調べると、「クレートやケージを用意してあげましょう。トイレのしつけなどしつけをしっかりしましょう」といったようなことが書かれています。
もちろん生活環境を整えることは重要ですが、もっと予防の面に目を向けてほしいのです。
多くの飼い主さんは犬を迎えてから次々に起こる困ったことに直面し、「こんなはずではなかった…」と肩を落とす傾向にあります。
しかし、犬という生き物を理解しどのように向き合えばいいのかを事前に知っていることで、どのように予防し対処していけばいいのかを冷静に考えることができます。
そのためには費用についても知っておかなければなりませんし、迎えてから「そんなにお金をかけられない」となってはネグレクトにも繋がりかねません。
そうならないようにするためにも各種のプロに事前に話を聞いておくことをおすすめします。
各種相談場所は以下の通りです。
・病気や予防について…動物病院
・トリミングにかかる費用や頻度について…トリマー(トリミングサロン)
・ドッグトレーニング(しつけ)による問題の予防…ドッグトレーナー
ただし、ひとくちにプロと言っても動物福祉に配慮しているプロばかりではありません。
ですので、先述したように話しを聞きながら「これは動物福祉の向上になるのか?配慮されていると言えるのか?」というのも自分の中で考えながら話を聞くようにしましょう。
■犬を迎えたら心身の健康のために予防と早期発見・対処をしよう
各種プロに事前に話を聞いておくということはさまざまな問題に対する予防に繋がるということです。
知っていれば「こんなはずじゃなかった」となることもありませんし、かかる費用についてもわかっていればそれを見据えた備えができます。
犬を迎えるうえで大切なのは問題が起こってから対処するのではなく、問題が起こる前に予防をしておくことです。
しかし、相手は生き物ですから何かしら問題が発生することももちろんあります。
だからこそ予防を徹底したうえで異常を早期発見できるようによく観察し、問題が複雑化して長期戦になってしまわないように早期対処することが大切なのです。
問題が複雑化して長期戦になるということは犬自身を苦しめるだけではなく、飼い主さん自身もダメージを受けてしまうため双方にとってよくありません。
なかには問題が複雑化したことで迎えた愛犬をかわいいと思えなくなってしまう飼い主さんも決して少なくなく、それは非常に悲しいことですよね。
そうしたことを防ぐためにも、予防と異常の早期発見・対処を意識した犬の飼い方をするようにしましょう。
まとめ
犬の飼い方のノウハウだけを言うなら、サークルやクレートを用意してしつけをしっかりしましょうという話しですが、それよりも根本的に大事なのは動物福祉の向上を考えることです。
飼育環境はその子にとって適切な環境になっているのか?
しつけの方法や考え方は犬の心や身体を傷つけるものになっていないか?
お手入れの方法や頻度は適切かどうか?
病気の予防はちゃんとできているか?異常を早期発見し対処できるか?
こうしたことをひとつひとつ考えて行動することが本当に考えるべき犬の飼い方です。
そのためにも動物病院・トリマー・ドッグトレーナーといった各プロにできれば迎える前に相談し、適切な飼育ができるかどうかを自分自身に問いかけて判断しましょう。
すでに迎えているのであれば問題が大きくなってしまう前に予防の観点から相談し、これからどうしていったほうがいいのかを確認してみてください。
そうすることで飼い主さんと愛犬の双方の幸福度を高めることができますよ。