犬や猫に装着するマイクロチップって何?本当に安全なの?
はじめに
2022年6月に、ペットの犬や猫に対するマイクロチップの装着を義務づける法律が施行されました。
マイクロチップとは、動物の体内に埋め込む小型機器のことです。これからペットを飼育しようとしている人にとっては義務ですが、施行以前からペットを飼育していた人に対しては努力義務となります。そんなマイクロチップの装着についてですが、そもそもマイクロチップに馴染みがないと思いますので、それが一体どんなものなのか、装着にはどんなメリットがあるのか、そしてペットの健康に悪影響はないのかなど、いろんな気になることや心配事があると思います。
そこで今回は、ペットへの装着が義務化されたマイクロチップについて、解説していきたいと思います。
マイクロチップについて
まずは、マイクロチップとはどのようなもので、なぜ装着する必要があるのかなどを紹介します。
・そもそもマイクロチップとは?
マイクロチップは、直径10mm程度の小さな電子器具です。
マイクロチップの中には15桁の番号情報が内蔵されており、それを専用のリーダーで読み取ることにより、そのチップに記憶された番号情報を取得することができます。
マイクロチップは基本的に、動物の肩あたりに注射器で挿入されます。
マイクロチップは電池を使わないため寿命が非常に長く、およそ25年と言われています。犬の最高齢のギネス記録は31歳であるため、これほどまで長生きするペットだといずれ効果がなくなってしまいますが、多くの場合においては、マイクロチップの寿命はペットの寿命を上回ることでしょう。
・どんなメリットがあるのか
そもそも、どうしてペットにマイクロチップを挿入しなければならないのでしょうか。
それはマイクロチップを装着することにより個体の識別ができるというメリットが得られるからです。マイクロチップの番号情報は個体特有の情報です。例を挙げれば、車のナンバープレートみたいな情報が、小さなチップの中に含まれているわけです。つまり、この情報を使えば、間違いのない個体識別を行うことができます。これは、迷子になったり盗まれたりしてしまったペットを飼い主さんの元に戻すことに役立つわけです。
飼い主さんには、何らかの理由でいなくなってしまったペットが戻ってくる可能性を高めるという点で、メリットが得られます。
その一方で、国としてはどのようなメリットがあって、このような政策を推進しているのでしょうか。
マイクロチップの義務化が始まったきっかけは、阪神・淡路大震災であると言われています。震災で被災すると人だけでなく、ペットも行き場をなくしてしまい、そしてそのまま飼い主さんとお別れになってしまう子もいます。飼い主さんと生き別れた動物たちは、そのまま保健所に連れて行かれ、最悪の場合殺処分されてしまいます。
また、それとは関係なく、無責任な理由で飼育している犬や猫を放棄する飼い主もいます。しかし、ペットにマイクロチップが装着され、飼い主との紐付けが可能になれば、そのようなことをする飼い主は減るでしょう。
つまり、ペットが孤立してしまう悲しい現実を変えるために、この法律が施行されたわけです。
・マイクロチップの歴史と海外の状況
マイクロチップは、40年ほど前から存在する歴史あるテクノロジーです。
元々は魚などの野生動物の研究に用いられてきました。そんなマイクロチップのペットへの装着は、1989年にイギリスにて実施されました。当初は装着を受け入れる獣医が不足していたり、動物愛護団体による反発があったりしたため、90年代はそれらの問題解決のため、多くのの活動が行われ、そして2015年にようやく義務化されるに至ったわけです。
現在では、イギリスの他にフランスやイスラエル、ニュージーランド、オーストラリアやアメリカの一部の州にて、ペットに対するマイクロチップの義務化が行われているようです。
ちなみにオーストラリアやアメリカでは、牛や馬などの家畜に対するマイクロチップの装着も推進されているみたいですよ。
マイクロチップが与える悪影響
ペットにマイクロチップを装着するとなると、やはりそれがペットに与える悪影響が気になるところだと思いますが、マイクロチップの挿入が原因となるペットへの悪影響はほとんどありません。
しかしながら、マイクロチップが血管に混入してしまうことも稀にあるみたいです。
ある研究では、8歳のシベリアンハスキーが、肺動脈にマイクロチップが混入したため呼吸困難を引き起こした例や、11歳の雑種犬の肺動脈にマイクロチップが混入した例が紹介されました。しかし、これらの事例は“挿入の際における獣医の不注意が原因である”と結論づけています(引用:https://doi.org/10.1002/vrc2.740)。
つまり、獣医がきちんと注意して挿入すれば、ペットに悪影響を及ぼす可能性がほとんどないわけです。
このほかに、国内外問わずマイクロチップの挿入による事故について調べましたが、そのような事例は全く見つかりませんでした。そのため、マイクロチップは非常に安全性が高いと言えるのではないでしょうか。
まとめ
小型とはいえ、体内に機械を入れることには抵抗があると思います。
しかしながら、マイクロチップの装着には大きなメリットがあり、その安全性は非常に高いことがお分かりいただけたかと思います。費用に関しては、地方自治体からの援助を受けることもできるため、ペットへのマイクロチップを装着する際には、お住まいの自治体でこれらの援助が行われているのかどうか調べてみるのも良いと思います。