ペットとコロナの関係〜飼い主もペットも健康に暮らすために〜

はじめに

 日本では2020年の春頃から急速に流行し始めたコロナウイルス。元々は動物が保有していたウイルスがヒトに感染したことがきっかけで流行したと言われています。このように、感染症の中には動物とヒトとの間で感染が起こるものがあり、コロナウイルスもその内の一つです。もし、ご家族がコロナウイルスに感染したら、看病と共にしっかり感染対策をすると思いますが、ペットに対する感染対策を講じる方は少ないのではないでしょうか。そもそも、コロナウイルスがペットに感染する可能性を考えている方がどれくらいいるでしょうか?

そこで今回は、コロナウイルス感染症などのヒトとペットの間で感染する病気について紹介したいと思います。

ヒトとペット間での感染

 まずはコロナウイルスがヒトからペットへと感染してしまった事例と、ペットからヒトへと感染してしまった事例を紹介し、続いてヒトとペット間での感染において気を付けるべきことを紹介します。

・ヒトからペットへの感染事例

 ほとんどの場合は飛沫感染や接触感染によって起こり、その事例の大半がイヌやネコです。一例として、6人家族のうち5人が感染したある家族で飼育されていたネコに呼吸器症状が見られ、コロナウイルスに感染していることが明らかになりました。これは氷山の一角であり、家庭内クラスターの起こった家族で飼育されているペットが感染しているケースは判明していないだけで他にも多数あると思われます。この他にも、動物園のトラやライオンなどが飼育員を経由して感染した事例があります。

このように、家庭内で飼育されている動物以外にも感染被害が及ぶことがあります。

・ペットからヒトへの感染事例

 今のところ日本では確認されていませんが、海外ではネコから獣医師への感染やペットショップのハムスターから店員への感染などが報告されています。基本的にはヒトからヒトや、ヒトからペットへの感染がほとんどで、動物間で感染が拡大することは少ないようです。そのため、感染を恐れてイヌを散歩させない、ネコを外に出さないといった対策は過剰な対策であり、その必要はないと思われます。

・気を付けるべきこと

 コロナウイルスに感染したペットの感染期間はヒトとほとんどかわらず、最大で10日ほどのようです。ただ、ヒトと比べて無症状であることが多いことがペット感染の特徴です。その一方で、ネコが感染した場合、他の動物と比べて発症しやすい傾向にあるようです。嘔吐や下痢、くしゃみが主な症状であるため、このような症状が出たら飼い主は感染対策を講じた上で、動物病院に連れていくようにしましょう。

コロナウイルスはペットからヒトへも感染する可能性があることを理解し、適切な距離や対策を講じて接するようにすることが重要だと思われます。

ペットから感染する病気

 2023年ごろから、コロナウイルスとの共生が日常化してきました。このように、我々人間はさまざまな病気を引き起こすウイルスや細菌と共生していかなければなりません。コロナウイルス以外にも、ペットとヒトが共通して感染する病気はたくさんあります。そこでここからは、その一例となる感染症を紹介していこうと思います。なお、最も有名であるであろう狂犬病はペットを飼育されている方ならみなさんご存知だと思いますので、今回は割愛させていただきます。

・サルモネラ症

 これはサルモネラという細菌が体内に入り込むことで発症する病気で、発熱や下痢、嘔吐などが主な症状です。食中毒の代表格でもありますが、ペットとの接触が感染経路となることもあります。これは、ペットの糞尿にサルモネラが含まれていることがあるためです。そのため、感染対策のために飼育スペースの掃除をした後は必ず手を洗うようにしましょう。また、糞尿を放置するとペットがサルモネラに感染し、そのペットとのスキンシップによりヒトに感染することもあります。ペットのみならずヒトの健康のためにも、飼育環境の衛生管理は非常に重要です。

・オウム病

 オウム病クラミジアが原因となる病気です。初期症状としては発熱や倦怠感で、次第に呼吸器症状も出現し、重篤な被害となることもあります。その名の通り、鳥との接触が発症原因となります。鳥の糞を吸い込んでしまったり、口移しで餌を与えたりすると発症することがあるため、羽毛や糞を定期的に除去するようにしましょう。また、たまにインターネットで餌の口移しを行っている動画を見かけますが、このような行為はもってのほかです。絶対に真似しないようにしましょう。

・パスツレラ症

 これは狂犬病と同じく、イヌやネコなどに噛まれたり引っ掻かれたりすることで感染する病気です。受傷部位の腫れや痛み、発熱などを引き起こします。この病気はパスツレラ菌に感染しているペットによる裂傷が原因となりますが、パスツレラ菌は意外にも多くの動物が感染しており、ある地域の調査ではイヌ20頭中9頭から感染が確認されました。そのため、比較的感染リスクの高い感染症であると言えます。感染対策としては、ペットの習性を理解し、ペットが嫌がることをしない、噛まれたり引っ掻かれたりするリスクを減らすことです。また、万が一受傷した場合は必ず消毒し、後日痛みが引かないようであれば病院を受診するようにしましょう。

まとめ

 今回はヒトとペットがより安全で健康に過ごせることを願い、新型コロナウイルス感染症など、ヒトとペットの間で感染する感染症について紹介しました。コロナウイルスがヒトからペットに、そしてペットからヒトに感染することは意外だったのではないでしょうか。また、このほかにもペットからヒトに感染する病気についてもいくつかまとめました。今まで何気無しにペットと接していた方は、これからはこのような感染リスクがあることに注意して、ヒトとペットの両方の健康に配慮した行動をとっていただけたらと思います。